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【やまざくら通信】木曽福島のかみさま 水無神社

遠く750年以上前からそこにあり続けるふるさとの森と社(やしろ)
親から子へと受け継がれた祭りへの熱い心
時代を越えて今に伝えられてきたそのパワーを感じてみませんか

 


 

木曽町福島の町の東、駒ケ岳から流れる八沢川沿いの伊谷地区にあり、古くは地元の八幡神社だった。鎌倉時代に飛騨一宮水無神社から「高照姫命(たかてるひめのみこ/大国主命の娘)」を勧請して祀り、今の水無神社になったと伝わる。祀られているのは、水や農耕、衣食住といった暮らしを守る神様で、木曽氏や代官山村氏をはじめ、人々の信仰を集めてきた。

スギやサワラなど樹齢数百年の大木が神社を囲んでおり、清々しい空気に満ちている。

現在の拝殿・祈祷殿・本殿は、明治初めに建立。伊勢神宮と同じ神明造が用いられている。木曽の大工を代表する“斎藤常吉”が棟梁をつとめた。過去の地震にもビクともしなかった

拝殿

寛政や天保など江戸時代の色鮮やかな絵馬があり、当時の祭礼行列の様子や昔の神社建物を知ることができる。


祭礼行列が描かれた絵馬

手水舎

山水を引いている

木の鳥居

天保15年、山村代官が寄進した木の鳥居。
昔の参道はここから始まっていた。


 

飛騨一宮水無神社

ルーツとされる飛騨一ノ宮水無神社。地元の人からは「すいむさん」と親しく呼ばれている。木曽町から北西に約50キロ、高山市街へ流れる宮川に面してあり、飛騨の一ノ宮として古くから名高い。水無は「みなし(水成)」又は「みずなし」と読み、川が伏流していることにちなむ。岐阜を中心に多くの分社がある。水源・交通・農耕を司り、ルーツは富山から南下してきた出雲系の神様といわれる。

 


毎年7月に開催される水無神社の例大祭は、1年かけて営まれる


12/31 大祓い

夏の例大祭で担がれたみこしの木を使い、かがり火を焚く


1/1 元旦祭

「みこしまくり」の惣介・幸助の役(精進)他を決める


5/2 飛騨へ

飛騨一ノ宮水無神社の例祭にあわせて参拝する


例大祭直前

7月中旬 屋台組立/のぼりをたてる
7/21 前夜祭(おこもりさい)
タデ・麦・小豆などをお供え、カミウタを歌って神輿をゆする
飛騨一宮から使いがくる

7/22-23 水無神社例大祭 みこしまくり


例大祭は、別名「みこしまくり」と呼ばれ、神輿をおとして、まくり(転がし)、最後には壊す荒々しいお祭り。
昔の木曽の杣人であった惣介・幸助の2人が、戦乱がおこった飛騨一宮水無神社から神様を木曽へ移そうとして、木曽に向かい国境で追っ手に迫られた時、神輿を転がしながら逃れて木曽福島に着いたという故事にちなむという。
祭りで神輿を担ぐ際「そうすけ!こうすけ」とかけ声をかける。神輿を「まくる」ようになったのは江戸時代(天保以降)と言われており、それまでは「押合い」程度だったとされる。

よこまくり


神輿のてっぺんの擬宝珠を支点にして転がす

たてまくり


祭りのクライマックスに行う。神輿を垂直に立ててひっくり返す。上に乗った枠もちは直前に飛び降りる。

みこし(=枠)について

毎年新しく作られ、まくられる度、白木の香りがする。
・重さ/100貫(約400kg)
・長さ/2間4尺 (約4m)
・主な素材/赤松生木(樹齢100年程度)


現在は、木曽町の大工2人が持ち回りで、前の年の神輿を雛形にして6月から1ヶ月かけて製作する。みこしをまくったときに落ちるかけら(破片)を持ち帰るとご利益があると言われる。


担ぎ手は「枠もち」と呼ばれ、地元の「水交会」が主に務める。一人当たり肩にかかる重さは、20kg以上。揃いの白い麻の法被を着る。

みこしまくりのあれこれ豆知識

ご馳走

氏子たちは21日の夕食に、うどんを食べる。これは、飛騨から木曽にきた神様が沢口平八家で宿泊した際「麦は煮えたか。タテ(植物のタデ)はすれたか。」と食事を催促したことがいわれとされる。例大祭前日のお供え物も「麦の物」。

だんじり

神輿と一緒に町中を練り歩く屋台。上段では御はやしが演奏される。江戸時代に木曽美林の商売で儲けた商人・新井新兵衛が寄進した。有形文化財にも認定されている。

心願(しんがん)

神輿の下を精進(しょうじん)が赤ん坊を抱いてくぐり、その子の健康を願う神事。当日に五千円からでお願いでき、子ども以外が健康を願いくぐることもある。

高い山

木曽郡内各地の祝いの席で唄われる唄。神輿を担ぎ練り歩く時に唄われる。

精進

精進になった2人は、一月一日から例大祭が終わるまで、肉食(4つ足)をせず、女人に接せず、不浄に近づかないで心身を清める。22日の朝9時から行われる本殿祭では、精進が神様を迎えにいき、神輿に移す。

花火大会

22日の夜には花火大会が行われ、 夜店などが街を賑わす。花火の轟音が木曽の谷あいに響き渡る。


行列

天狗の面をかぶった猿田彦が結界を切りながら進む。衣装、道具が古い歴史を物語っている。


 

編集・発行 / グループやまざくら Mail / moriya-y-k@ja2.so-net.ne.jp
写真提供 /
表紙: 宮坂由香
木曽町フォトコンテスト入賞者の方々、木村信一さん

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