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【里らぼレポート】第1回オリエン・現場訪問
2019年にスタートした中山間地域での新しい働き方や生き方を考える「さとくらしカレッジ木曽」を経て、木曽の新しい「もの・こと」をつくる「里らぼ木曽2020」がはじまりました。
里らぼは、全5回の講座を通して参加者それぞれのアイデアを形にしていく実践プログラム。
コンセプトは「もういちど、ここに種をまいてみる」。
アイデアや技術・知識と共に、埋もれかけてしまった木曽地域の文化や知恵を再び耕すことで、未来につながる新たな魅力を芽生えさせ、地域の土壌となる「もの・こと」をつくりだしたいと考えています。
講師は、「さとくらしカレッジ木曽」第1回目のゲストでもあったデザイナーの高橋孝治さん。
さとくらしカレッジ第一回の様子はこちら
2020年10月16日に行われた「説明会&トークイベント」には、総勢20名の方が参加してくださいました。
その中から実際に応募し審査を通過したのは、5組。
5組の初顔合わせとなった里らぼ第1回の様子を、運営スタッフがお届けします。
2020年11月8日、里らぼ木曽がスタート
紅葉が美しい木曽の11月初旬秋晴れの日。
初対面の方が多く緊張した雰囲気の中で、里らぼがスタートしました。
参加のきっかけや普段やっていることなどの自己紹介をすませ、早々にふらっと木曽を出発。
参加者それぞれが実際に働いている場所を訪れ、新しい「もの・こと」のヒントを探します。
最初にむかったのは、木曽町開田高原。
1組目の参加者「株式会社霧しな」の大場さんから、木曽地域への想いを聞くとともに、山梨県の企業が開田の水や蕎麦粉に惚れ込んで、この地にに工場を建てた経緯などを伺いました。
もっとも驚いたのは、蕎麦に保存料が入っているか否か、ローラーでひいたものか、それとも石臼でひいたものか、開田の早生品種と他の品種との違いを、匂い・香りを自分の鼻で体感したことです。
「香りを嗅ぐ」という体験だけで、蕎麦を見る目が違ってきます。
「この蕎麦の香りなど五感を通して蕎麦を体験できるプログラムをつくりたい」と大場さん。今後がとても楽しみです。
次は、開田高原から車で50分ほどの南木曽の柿其渓谷付近。
2組目「株式会社勝野木材」の木工部のお二人が働く工場へ向かいました。
勝野木材では、木曽ヒノキの森林の伐採から製材、木工品への加工・販売を一貫して行っています。そして、その製材する過程で出る端材を活用し、エンドユーザー向けの物をつくるというのが木工部のミッションです。
お話を聞くなかで、驚いたことは、販売されている木で表記が違うこと。
・木曽ひのき→人の手で植えられた木から採れた木
・木曽檜→天然木から種が落ちて自然に育った木
木は木でも、育ち方により、見た目も、香りも違うということを初めて知りました。
とても広い工場の中にたくさんの大小さまざまな木が並んでいて、資源を大切に使い切りたいという想いも伝わってきます。
勝野木材から参加している小川さん、白金さんからは、「端材や捨てる素材を生かしたものづくり」のアイデア提案をしてもらいました。
端材がどう活きてくるのか、期待が膨らみます。
次に向かったのは、上松町。駅から少しはずれたところにある工房へ。
上松町には、木工を仕事にしたいという人々が全国から集まる上松技術専門校があります。
しかし修了後は、そのほとんどが県内外出て行ってしまい、上松町に残る人はほとんどいません。
そこで、2018年4月に上松技術専門校の修了生2名が地域おこし協力隊となり、発足したのがAGEMATSU WOOD LIFE MAKING。
参加してくださった徳永さんは、現在は2020年より上松町地域おこし協力隊となり、AGEMATSU WOOD LIFE MAKINGに所属。上松町のふるさと納税返礼品などを作りながら、個人作家として木工品も制作しているそう。
この日は、仲間たちと少しずつ改装したという工房と材料置き場を見せてもらいました。
徳永さんからのアイデア提案は、コンクリートなどの固い素材と木材を組み合わせたプロダクトを作りたいというもの。
「素材」について、講師やほか参加者からたくさんのヒントが出されました。
4組目の参加者は、会社員として働きながら、休みの日に木工制作をしている野々村さん。
先述した上松技術専門学校の卒業生でもあります。
卒業後も、木曽町のはずれにある、昔建具の工場だった場所をシェアしながら、木工制作を続けているそう。
私たちが訪れたこの日も、工房をシェアしているという別の方が制作活動をされていました。
野々村さんからのアイデア提案は「人と関わり合いながら、プロダクトを作りたい」というもの。
その提案の根っこにある野々村さんの想いを聞かせてもらいました。
そしてこの日、最後の発表になったのが、5組目の参加者である吉江さん。
塩尻市に事務所兼工房「ミミー商店」のオープン準備(11月8日現在)をされています。
時間の都合もあり、前日に運営メンバーでミミー商店に訪問させていただき、その時撮影した動画や写真を見ながら吉江さんのお話をお伺いしました。
吉江さんは、会社員をやめ、「家印」という屋号で、看板や表札をデザインから製作まで関わって制作しています。
新しく準備している拠点・ミミー商店は「自分の作った看板を展示するスペースとして使いながら、人と人とが繋がりを持てる場所にもしたい」と考えているそう。
木曽地域を超えて、これから参加している方とのコラボレーションも生まれるのか、楽しみです。
5組の現場視察とアイデア提案が終わり、講師の高橋孝治さんによる「アイデアをかたちにする」をテーマにした講義。
これまで携わってきた商品やその手法についてお話をきき、里らぼ第1回が終了。
前日の塩尻への訪問も含めると、トータルの移動距離は約200km!
参加者の皆さんがこの講義の内容やアドバイスを取り入れつつ、次までにどのようにアイデアをブラッシュアップするのか。
次回レポートを、お楽しみに。
参加者(現場視察順)
・株式会社霧しな/大場さん
・株式会社 勝野木材/小川さん、白金さんさん
・上松町地域おこし協力隊・木工部/徳永さん
・木工作家/野々村さん
・家印/吉江さん
講師・運営メンバー
・講師/高橋孝治(デザイナー)
・企画・運営/蒲沼明(デザイナー・BOCCA)
・企画・運営/坂下・西尾(ふらっと木曽)
・地域アドバイザー/井上・井尾(en-shouten)