さとくらしカレッジ木曽01「物のデザインと地域づくり」レポート
木曽ひのきをはじめとした木の産地として知られる木曽地域は、木工を中心としたものづくりの地域ともいえます。そんな木曽で「ものづくり」をキーワードに、さとくらしカレッジ木曽の第1回「物のデザインと地域づくり」が開催されました。
講師は、焼き物の産地・愛知県常滑市にてプロダクトデザインを軸に活動される高橋孝治さん。講座の前には、はじめて木曽地域に来られるという高橋さんと一緒に、木曽福島の街並みを歩きました。
会場となるふらっと木曽からスタートした地元民による木曽福島のまちあるきツアー。ものづくりを学んでいる人や仕事にしている人を中心に、U・Iターンした人、デザインを仕事にしている人などが揃い、講師の高橋さんと木曽福島の町へ。
木曽福島は、江戸時代に中山道の宿場町の1つ・福島宿として栄えた場所で、木曽漆器発祥の地とも言われています。途中、漆の館に立ち寄り、漆芸家 手塚勘久さんの作品を鑑賞、お話もお伺いすることができました。
谷あいの町である木曽福島には、少ない土地を利用して、木曽川にせり出すように家が建てられている「崖家づくり」を見ることができます。橋の上と下から崖家づくりを鑑賞し、崖家づくりの物件をリノベーションして作られた「商いとなにか en-shouten」にも立ち寄り、高橋さんの関わっている六古窯の商品もみさせていただきました。
90分のまちあるきから戻り、いよいよ講座がスタート。まずは「物のデザイン」について、どう考え、どうプロジェクトを作っていってるのかを具体的な事例を参考に教えてもらいました。
思考プロセスやリサーチ方法、何気ない日常をどう観察するかといったお話は、プロダクトデザインに従事する人に限らず、「様々なプロジェクトをどう作っていくのか」としても参考になったと思います。
プロジェクトの紹介に合わせて、生い立ちから今に至るまでのお話もしていただきました。大学時代には、実際に焼き物の産地・有田にいき卒業制作を行う中で「プロダクトは1人ではできない」ということ、「現場に入ってものを作るのは楽しい」という気づきを得たそうです。
大学の卒業後は、無印良品でプロダクトデザインの仕事を11年間されたのち、焼き物の産地・愛知県常滑市に移住された高橋さん。
作り手を第一に考えたいという思いから移住された常滑では、プロダクトデザインを軸に産地コミュニティの醸成なども行われてます。
後半の「地域づくり」をテーマにしたお話では、常滑に移住されてから実践されている3つのプロジェクト【1.常滑焼の各ワークショップ、2.人材育成事業、3.とっくりPROJECT】の内容やその狙いを紹介していただきました。
中学生のお子さんをはじめ、林業大学校や上松技術専門学校の生徒さん、作り手の方や行政の方、デザイン関係の方、ものづくりに興味のある一般の方など、多くの方にご参加いただきました。みなさん集中力を切らさずに2時間弱、お話を聞かれていたのが印象的でした。
お話のあとには、実際に高橋さんがデザインされた商品を手にする時間もあり、新しい商品の見え方があったのではないでしょうか。
講座のあとは、交流会も開催しました。お酒を飲みながら、講師の高橋さんも交えて、ざっくばらんにお喋り。
料理は、ふらっと木曽の西尾絵里子さんが、木曽の食材をつかって提供してくれました。器には、木曽の作家さんたちが作ったお皿が使われ、これまた料理を楽しませてくれました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
Special thanks
写真撮影(まちあるき・講座):フォトグラファー 池田昌広さん
スタッフ:三澤菜摘さん、鄭緑芸さん
Written by
キソマナビネットワーク 坂下佳奈
—追記—-
個人的には、序盤にでてきたキーワード「プロダクトデザインは、地域づくりの1つの手段」というのが心に刺さりました。イベントを企画する中で、分けて考えてしまっていたプロダクトデザイン(物のデザイン)と地域づくり。お話を聞く中で、「作り手を第一に考えたい」という想いから移住された高橋さんだからこそ、プロダクトデザインと地域づくりが繋がっているのだなと強く感じました。時間をかけて地域を知り、人間関係を作っていき、試行錯誤のなかで生み出されているプロジェクトや製品たち。生半可な気持ちではできないものだなと感じるとともに、自分がどんなデザインをしていきたいのか立ち止まって考えさせられる2時間でした。
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