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【里らぼレポート】第5回 発表・講評/展示会
埋もれかけてしまった木曽地域の文化や知恵を再び耕し、未来につながる「もの・こと」を生み出すプログラム「里らぼ木曽2020」。
常滑に拠点を置きプロダクトデザインを軸に様々なプロジェクトを行うクリエイティブディレクター高橋孝治さんを講師に迎え、2020年11月8日から始まりました。
いよいよ、最終回です。 白熱した会場の模様をレポートします。
- 2020年11月8日の「里らぼ」第1回目の現場訪問の様子はこちらからご覧ください
- 2020年11月29日の「里らぼ」第2回目の現場訪問の様子はこちらからご覧ください
- 2020年12月13日の「里らぼ」第3回目の現場訪問の様子はこちらからご覧ください
- 2021年1月17日の「里らぼ」第4回目の現場訪問の様子はこちらからご覧ください
- 高橋さんをゲストに迎えた2019年「さとくらしカレッジ」第一回の様子はこちらからご覧ください
坂本大三郎さんをゲストレビュアーに迎えて
2020年11月から参加者のアイデアや技術・知識と共に、埋もれかけてしまった木曽地域の文化や知恵を再び耕してきました。
5チームが5カ月かけて試行錯誤したプロジェクトを発表しました。
会場となった「御料館」は木曽谷最古の洋風建築であり、木曽町指定有形文化財に指定されている歴史ある建物で、最終プレゼンテーションにぴったりな場所となりました。
前日から試作品の搬入や音響設備の設営をし、当日もオンライン配信の準備などで慌ただしく始まりました。
開場とともに、見学者が続々と訪れ、緊張の面持ちのなか、いよいよプレゼン発表開始です。
まずは運営メンバーの坂下と、講師の高橋さんから、今年度の「里らぼ2020」の経緯や今までの様子を紹介です。
そして、今回の最終プレゼンテーションのゲストビュアーとしてお越しいただいたのは、山形県で山伏/イラストレーターとしてご活躍の坂本大三郎さんです。
坂本さんからは、山形に移住した経緯や山伏のこと。現在の山間地域での人との繋がりやお金のことなどをお話してくださり、最初からとても興味深い話で序盤から1時間くらい聞ける内容でした。
今回は坂本さんと高橋さんのお二人からどんな意見がいただけるのか?とても楽しみです。
本当の蕎麦の美味しさを考えるきっかけに。「種まきからはじめる蕎麦の教室」
最初のトップバッターは「株式会社霧しな」大場さんです。
山梨県の企業が木曽開田地区の水や蕎麦粉に惚れ込んで、この地に工場を建てた「株式会社霧しな」。
地元の方やこの地域に敬意を払うと共に、これからは、もっと地域の方と関わりをもちながら、新しい蕎麦の活用を提案したい。
そこで、蕎麦を育てることから関わることができる「種まきからはじめる蕎麦の教室」というプログラムを提案しました。
蕎麦打ち教室などは、どこにでもあるけれど、蕎麦の種を蒔くことから教えてもらえる教室はなかなかありません。
そこで、地元の蕎麦農家さんや蕎麦打ち名人と触れ合ったり、新しい蕎麦粉の使い方の料理教室を開催したり、また、自ら石臼を挽いて蕎麦打ちをしたいという提案です。
高橋さんからは、「パッケージやビジュアルで食べてみたいと思えることが大切」とのアドバイスなどがありました。
レビュアーの坂本さんからは、実際に蕎麦の香りを嗅ぎ「ぜひ食べてみたい。また昔の御岳信仰の行者さんたちはどうやって蕎麦を食べていたのか?知りたい」など、山伏らしい感想が。
これからどんな蕎麦の教室が実際に開催されるのか、とても楽しみです。
塩尻市で人と人が繋がれる場所を作りたい「木曽を知る。ほりだしもの ほりだしこと」
塩尻市で看板屋をしつつ、ミミ―商店というコミュニティースペースを作った「家印」の吉江さん。
今回の「里らぼ」の参加メンバーとの交流や、現場訪問を重ねることで、塩尻地域の人にもっと木曽のことを知ってもらいたいということになり「木曽を知る。ほりだしもの ほりだしこと」を提案しました。
木曽路の玄関口ともいえる「塩尻」にあるミミー商店にて、
木曽に眠るほりだしものやことを伝えるイベントを開催するというものです。
「中山道の入り口である中津川と塩尻に木曽の案内場所があったらとても面白い。吉江さんなりの木曽の視点を見せられるようにもう一歩踏み込んでほしい」と高橋さん。
坂本さんからは「日本には古いものが沢山残っていてとても貴重な場所です。木曽には中山道沿いの街道の痕跡がまだたくさん残っているように見える。表札などもきっと残っているはず。それがどこからやってきたものなのか?などに注目しても面白いのでは?」などの意見も。
吉江さんから見た木曽面白い「もの・こと」がそろったマーケットの開催が楽しみです。
当たり前の存在をもう一度見直してみる 「木曽の資源に新しいカタチを」
木工チームのトップバッターは、上松町地域おこし協力隊の木工部所属の徳永さん。
大学では化学の高分子専攻。自動車部品メーカーで樹脂流動解析業務の経歴を持ち、木工の道へ。
里らぼでは、改めて木曽の素材や資源を調べ直し、木曽地域の川沿いでよく見る「木曽石」や「檜」に注目。
第1回のアイデアから一転し、最終回では「木曽の資源に新しいカタチを」を提案しました。
檜を使ったお香や、木曽石の上で苔を育てる「苔テラリウム」など地域資源を活用した面白い提案です。
高橋さんからは、
「お香の素材も、檜だけではなく、薬草などの素材でもできるのでは?これからも色々チャレンジしてほしい」と。
「昔は資金を持っていない人しか作れなかったものが、今では3Dプリンターなどで簡単に作ることができる。
古いものも大切だけど、新しいものから目を逸らさないこと。自分しかできないことを魅せながらモノづくりをすることも大切。」と坂本さん。
今後も木曽の当たり前に存在しているものが、徳永さんの新しい視点でどのように変化するのか期待しましょう。
檜の良さをストレートに伝える 「檜を使った家具」
シェア工房で作家活動をしている木工作家の野々村さん。
木曽の五木の歴史を調べたり、野々村さん自身が何を作りたいのか?の試行錯誤を重ねての提案は「檜を使った家具」。
檜の切り方で木の断面が全く違って見えることや、檜そのものの特徴を会場に持って来られた野々村さんの家具を見ながら、その断面や特徴を生かした家具の説明を受けました。
高橋さんからは、「檜の良いところがストレートに伝わってきた。可能性を感じます。」と。
坂本さんからも、「格好いいです。値段設定をどうするのか?」などの質問と、価格設定は皆悩むところだけど、「欲しい人には高い値段で売ってよいと思う。」アドバイスが。
野々村さんが坦々と言葉を選びながら、檜の良さを伝えてらっしゃったことが印象的でした。
これからこの家具や雑貨類がどのような展開をみせるのか楽しみに待ちたいと思います。
ユーザーとともに端材の活用を育てていく 「W/OOD」
最後の発表は、木曽の国有林の木曽檜の切り出し、製材している「株式会社勝野木材」の小川さん。
製材するときに出る沢山のヒノキの端材を様々な形にして販売しつつ、端材そのものも公開し、ユーザーとともに端材の活用を育てていく「W/OOD」というプロジェクトを発表しました。
木曽の国有林の歴史や、株式会社勝野木材がどのように檜を活用してきたのか?の説明から始まり、今後はユーザーと共に限りある貴重な資源を活用していきたいという熱い想いが伝わってきました。
高橋さんからは、「業界の常がわからない人や、若い世代は端材が美しいと思う人がいるはず。可能性を感じます。発表がとても感動的でした。」と。
坂本さんからも「とても格好がいい。木は使っていくうちに味が出て来るし、この発表で本格的な檜の価値が良くわかりました。」とのコメントをいただきました。
「W/OOD」プロジェクトがユーザーと共に変化し、端材がどのような活用されていくのか楽しみです。
レビュアー・全体講師の2人から最後に
盛りだくさんの「里らぼ2020」5組のプレゼンテーション発表が終わりました。
最後は、里らぼ講師の高橋さん、レビュアーの坂本さんから5組の発表や里らぼの取り組みについて、お話をしていただきました。
■ デザイナー 高橋孝治さん
里らぼでは「ふらっと木曽」をセンターにしながら、良いチームが出来たと思う。
今この時点で大ヒット商品ができるわけではなく、やっと旗を立てたところ。
この発表を見て次回参加したい人が増えるかもしれない。
結果を急ぎ過ぎずゆっくりやっていきましょう。
■ イラストレーター 坂本大三郎さん
今回、ゲストに呼ばれてどんなものが出てくるのか心配だったけど、使ってみたいなと思えるものが沢山ありました。
アイデアを形にすることは大変だし時間がかかる、作って世に出しても厳しい判断をされることが多い。
だからこそ作ったものをどういう場所(人の目につく所やメディア)に出すのかが大切になります。
そのためには、今回のようなチームを作っていくことや、行政のバックアップも必要になっていきます。
同じ山間部で目指すべき営みとして、物を売って原資を作り、共に地に足をついた暮らしをしていきましょう。
約5カ月。埋もれかけてしまった木曽地域の文化や知恵を再び耕すというテーマに向き合い
講師や運営陣と共に切磋琢磨して過ごしてきました。
ここで終わりではなく、ここからが本当のスタートです。
各チームのこれからにどうぞご期待ください!
参加者(現場視察順)
・株式会社霧しな/大場さん
・株式会社 勝野木材/小川さん、白金さんさん
・上松町地域おこし協力隊・木工部/徳永さん
・木工作家/野々村さん
・家印/吉江さん
講師・運営メンバー
・ゲストレビュアー/坂本大三郎(文筆家・イラストレーター)
・講師/高橋孝治(デザイナー)
・企画・運営/蒲沼明(デザイナー・BOCCA)
・企画・運営/坂下・西尾(ふらっと木曽)
・地域アドバイザー/井上・井尾(en-shouten)